アイヌ民族の方々が使ってきた「アイヌ語」は、自然に対するリスペクトが込められた言葉がたくさんあり、言葉の”響き”がかわいい単語も豊富です。
そんなアイヌ語はペットの名前にも最適!ということで、今回はペットに名付けたいアイヌ語をピックアップして紹介していきたいと思います。
「アイヌ」について
「アイヌ」について、まず知っておいてほしい予備知識ですが、アイヌ民族は北海道の先住民で、「アイヌ=人間」の意味。
海や川、自然界に存在する動植物のほか、(人が作った)道具にも神が宿っている(姿を変えて人間の世界にいる)と考えています。
そんなアイヌ民族の言語が「アイヌ語」となりますが、現在は消滅の危機に迫られている言語でもあります。(アイヌの血を引く方々はいますが、日本語が主言語のため)
神を意味する”カムイ”を冠す単語
日本語や英語にもありますが、音の響きや語呂が良くても愛称には不向きなアイヌ語があります。
その一つがアイヌ語の「カムイ」で、カムイを冠するアイヌ語をいくつか挙げると、以下のような言葉が存在します。
- アペフチカムイ(apehucikamuy) : 火の女神
- イレスカムイ(iresukamuy) : 火の女神
- イタクカシカムイ(itakkaskamuy) : 言葉の神
- シリコロカムイ(sirkorkamuy) : 大地をつかさどる神
- ルアンペアシテカムイ(ruanpeastekamuy) : 雨を降らす神
- キムンカムイ(kimunkamuy) : 熊(山の神)
- レプンカムイ(repunkamuy) : シャチ(沖の神)
- カムイチェプ(kamuy-cep) : サケ(魚の神)
- コタンコロカムイ(kotankorkamuy) : エゾフクロウ(村を守る神)
- カムイフム(kamuyhum) : 雷
ここで注目したいのが、「山の神=熊」の意味を持つ「キムンカムイ」。
狩猟の対象となる熊もまた、食料となるために(熊の姿となって)人間の世界にやってきた神という考え方なのです。
一方、村を襲うような(悪い)熊のことは”悪い神”を意味する「ウエンカムイ」と呼ばれます!
「神」を意味する”カムイ”というアイヌ語は、ペットの名前としては神々しすぎたり、向かないかなぁという印象も。
と、予備知識の前置きが長くなりましたが、さっそくペットの名前におすすめなアイヌ語の単語を見ていきましょう!
地域・場所によって方言的な違いがある単語は、呼び方を2つ並べてあります!
自然を表すアイヌ語はペットの名前にも最適
- アトゥイ(atuy) : 海
- ノンノ(nonno) : 花
- レラ(rera) : 風
- カント(kanto) : 天空、空、宇宙
- ヌプリ(nupuri) : 山
- ニタイ(nitay) : 森、林
- ウパシ(upas) : 雪
- チュプ(cup) : 太陽、月
- ノチウ(nociw) : 星
- アペ(ape) : 火
実は雑誌「non-no(ノンノ)」の由来はアイヌ語なんだそう。
アイヌ語で「ノンノ」は「花」という意味を持っていて、non-noの初代編集長が名付けたみたいです。素敵ですよね!
そのほか、生まれた季節に由来したアイヌ語を付けたい!という場合は、春夏秋冬を表すアイヌ語もおすすめです。
- パイカラ(paykar) : 春
- サク(sak) : 夏
- チュク(cuk) : 秋
- マタ(mata) : 冬
ペットの毛色や見た目を活かすなら
- タンネ(tanne) : 長い
- タクネ(takne) : 短い
- レタラ(retar) : 白
- クンネ(kunne) : 黒
- フレ(hure) : 赤
- シウニン(siwnin) : 青、緑、黄色
白い犬は”レタラセタ(retar-seta) “、茶系の犬(赤犬)は”フレセタ(hure-seta)” となりますが、「レタラ」だけでも名前としては素敵ですよね!
実はアイヌ語による色の分け方は4つのみで、このうち”シウニン”は青・緑・黄色のいずれも表現する単語です。
ただ、日本語(和)が由来になっているなぁと感じさせるこんな色(言葉)もあります。
- コンカネ、コンカニ(konkane,konkani) : 金
- シロカネ、シロカニ(sirokane,sirokani) : 銀色
ペットの”特徴”を活かせるアイヌ語
- ポロ(poro) : 大きい、多い
- ポン(pon) : 小さい、少ない
- ポンノ(pon-no) : 小さい、僅か
- シタ、セタ(sita,seta) : 犬
- ポンセタ,ポイセタ,ポシタ(poyseta,posta) : 子犬
- チャペ(cape) : 猫
ちょっと大きめな仔・小さめな仔には「ポロ」「ポン」みたいなアイヌ語もかわいい響きでおすすめですね。
因みに“ポンノポンノ(ponno-ponno)”でほんの少し、”ポンノボロ(pon-no-poro)”は少し大きいの意味。
「犬」の意味を持つ「セタ(sita,seta)」と合わせることで、子犬を意味する「ポンセタ(pon seta)」になります。
※地域によって発音が若干異なるようです
ペットの性格や様子から名前をつけるなら
- リムセ(rimse) : 踊る
- タプカラ(tapkar) : 踏舞する
- シノッ(sinot) : 遊ぶ
- ミナ(mina) : 笑う、微笑む
- アプカシ(apkas) : 歩く
- ラメトク(rametok) : 勇気、度胸、勇敢
- キロロ(kiror) : 力(ちから)
- モコロ(mokor) : 眠る、睡眠する、熟睡する
- エトロ(etoro) : いびき(をかく)
よく寝る子には「モコロ」、明るく天真爛漫なタイプであれば「ミナ」といった感じに、アイヌ語の意味も含めたペットの名前もおすすめ!
因みに「シノッ(sinot)」ですが、”シノ(sino)”だと「本当に」という意味に。”ッ”が必要です!
アイヌ語の性別を表現する単語
- ピンネ(pinne) : オスの〜
- マッネ(matne) : メスの〜
- オッカヨ(okkayo) : 男性
- メノコ(menoko) : 女性
- ユポ(yupo) : 兄さん、お兄ちゃん
- サポ(sapo) : 姉さん、お姉さん
- アク(ak) : 弟
- トゥレシ(tures) : 妹
- ニシパ(nispa) : 男性に対する尊称(親方や紳士など)
「ピンネセタ(pinne-seta)」でオス犬、「マッネセタ(matne-seta)」でメス犬という意味になります。
単語によっては、愛着や親愛を表現する時に「ポ(po)」が付けられ、「ク(ku) 」が付くと”私の〜”といった表現に変わります。
- クユポ(ku=yupo) : 私のお兄さん
- クサポ(ku=sapo) : 私のお姉さん
ペットの名前に適した”大切なもの”を表すアイヌ語
- トクイ(tokuy) : 友達、親しい人
- ウタラ(utar) : 仲間、親戚
- チセウンウタラ(cise-un-utar) : 家族
- ウトゥラ(utura) : 〜を同伴する、一緒に、共に
- エヤム(eyam) : 大切にする、大事にする、守る
- アニヤンペ(a=eyam-pe) : 大切にされる物や人
- アニシカプ(a=niska-p) : 大事な物
- オマプ(omap) : 〜を可愛がる、〜に愛情を注ぐ
- エシノッペ(esinotpe) : おもちゃ
- アオマッペ(a-omap-pe) : かわいいもの、人が愛するもの
ここのブロックではアイヌ語で表現した”大切なもの”を意味する言葉を紹介しました。
単語だけでなく動詞も含んでいますが、言葉の響きがかわいい言葉も多いですよね。
名前の由来にもこだわりたい!という方は参考にしてみてくださいね。
アイヌ語の”響き”がかわいい単語
最期に、意味はともかく単語の”響き”で命名したい!という方に向けたアイヌ語をご紹介。
- ピリカ(pirka) : 美しい・可愛い・豊か・素晴らしい
- イコロ(ikor) : 宝
- アシリ(asir) : 新しい
- オソマ(osoma) : 大便(をする)
ゴールデンカムイでもお馴染みの「オソマ(osoma)」は”うんち”の意味ですが、響きとしては可愛らしい!
悪霊を寄り付かせないためという、奥深い言葉の意味もまた良いです。
「ピリカ」はアイヌ語の中でも有名な単語の一つで、”ピリカ”を冠するアイヌ語は以下のようにプラスな言葉に含まれ、ペットの名前にもおすすめです!
- シリピリカ(sirpirka) : 天気がいい
- ピリカウレシカ(pirkaureska) : 良い暮らし
- ピリカメノコ(pirkamenoko) : 美しい女
- ピリカモンライケ(pirkamonrayke) : よい仕事をする
関連する記事
【参照】
- 国立アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ
- アイヌ文化ポータルサイト : 公益財団法人 アイヌ民族文化財団
- Wikipedia : アイヌ語の語彙一覧