犬の飛行機移動とはリスクが高い?国際線&国内線の死亡率を調べてみた

犬を飛行機に乗せる際、飛行機輸送によるリスクや死亡率は最も気になるところ。

米国運輸省のデータでは5年間の事故発生率が、10000頭中0.78%という割合(2015年〜2019年平均)でした。

ほとんどの航空会社は0頭でしたが、事故が最も多く発生している航空会社では10、000頭中2.24頭という割合に。

一方、日本ではANAだけが事故件数をしっかりと公表しています。

国内線と国際線とでは詳細な比較はできませんが、今回は飛行機での移動による犬の死亡率について詳しく解説していきたいと思います。

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国際線(アメリカ) 犬の輸送数と死亡率

空港のイメージ画像
Photo by Free To Use Sounds on Unsplash

まずは日本国内便との比較のため、アメリカの航空会社のデータをご紹介していきます。

アメリカでは航空会社各社の年間データが米国運輸省によって公表されており、動物の輸送頭数と事故件数(死亡、怪我、喪失)を把握することができます。

なお、”動物”の内訳はわかりませんので、犬や猫なのか小動物なのかはわかりません。

一方、日本では「ANA」以外はデータを公開しておらず、アメリカのように動物を輸送している年間の全体数や事故件数を詳細に把握することができません。

動物の事故件数が突出して多いユナイテッド航空

日本では把握することができないデータなので、国内線と国際線で詳細に比較することは難しいですが、アメリカにおける「2017年」の航空輸送中の事故件数割合は、10000頭に対し全体で0.79%(頭)という割合でした。

日本ではおそらくこれよりも低い?数値なのかなとも思いますが、驚くべき点は全17社に対し、ユナイテッド航空(UAL)だけが突出して事故が多いという点です。

航空会社 動物
輸送数
死亡 怪我 喪失 事故
合計数
事故率
/10000
UAL
(ユナイテッド航空)
138,178 18 13 0 31 2.24
ASA
(アラスカ航空)
114,974 2 0 1 3 0.26
DAL
(デルタ航空)
57,479 2 1 0 3 0.52
AAL
(アメリカン航空)
34,628 2 1 0 3 0.87

事故件数0の航空会社

SKW/スカイウェスト航空(46,392)、ASQ/エクスプレスジェット航空(23,256)、QXE/ホライゾン航空(17,289)、UCA/コミュートエアー(16,893)、RPA/リパブリック航空(14,872)、ASH/メサ航空(13,669)、GJS/ゴー・ジェット航空(8,014)、HAL/ハワイアン航空(7,510)、ENY/エンヴォイエアー(6,470)、EDV/エンデバーエアー(4,951)、NCR/コンパス・エアラインズ(2,054)、SCX/サンカントリー航空(304)、TCF/シャトル・アメリカ(61)
※括弧内は輸送数合計、輸送数順
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死亡率や事故は”輸送数”の多さで比例する?

ユナイテッド航空
Photo by Christian Lambert on Unsplash

ユナイテッド航空というと、世界的に知られている航空会社のひとつ。

動物を乗せる回数も多い=事故が多いの?と思ってしまいますが、そういうわけではなさそうです。

例えば2017年の輸送数で比較すると、ユナイテッド航空とアラスカ航空(ASA)が圧倒的に多く動物を輸送していることがわかります。

  • ユナイテッド航空 138,178頭
  • アラスカ航空 114、974頭
  • デルタ航空 57,479頭

※2017年の輸送数

ユナイテッド航空とアラスカ航空は約20,000頭の差

続いて事故の割合(10,000頭中で何%)で比較すると、以下の通りとなります。

  • ユナイテッド航空 2.24%
  • アラスカ航空 0.26%
  • デルタ航空 0.52%

※2017年の輸送数から算出した事故の割合

このとおり、ユナイテッド航空は他社と比較しても圧倒的に多く事故が発生しており、アラスカ航空と比較すると10倍近くの割合に。

一方、アラスカ航空はデルタ航空(DAL)と比較しても、かなり事故率が低いという事もわかります。

2015年〜2019年のデータから見る飛行機輸送の事故件数

ここまでは2017年のデータを元に解説してきましたが、前年度にあたる2016年には全体で26頭の動物が輸送中に死亡。

このうち約3分の1にあたる9頭が、ユナイテッド航空による事故でした。

2015年〜2019年 アメリカの航空会社における動物の輸送数と事故件数・割合

航空会社 動物
輸送数
死亡 怪我 喪失 事故
合計数
事故率
/10000
2015 534,537 35 25 3 63 1.18
2016 523,743 26 22 0 48 0.92
2017 506,994 24 15 1 40 0.79
2018 424,621 10 7 0 17 0.40
2019 404,556 11 8 0 19 0.47

全体の数字を確認すると、1年毎に事故発生率が減少してきているのがわかります。

因みに2020年7月のレポート(2019年の統計)では、コロナによる影響もあると思われますが、2019年7月の事故を最後に動物関連の事故は発生していないとのこと。

人間においても100%の安全は保証されていませんので、事故発生率0%というのはかなり難しい数字だと思いますが、10000頭あたり0.4%前後の数字で推移してきていることから、飛行機による動物の輸送事故はかなり稀なケースであると言えます。

2019年、ユナイテッド航空の現状はどうだった?

アメリカの全航空会社による統計では、徐々に事故発生率が減少傾向にあることがわかりましたが、気になるユナイテッド航空の2019年のデータを見ていきましょう。

ユナイテッド航空が最も悪質な航空会社のように説明してきてしまいましたが、数字は大きく改善されてきているようです。

2019年 アメリカの航空会社における動物の輸送数と事故件数・割合

航空会社 動物
輸送数
死亡 怪我 喪失 事故
合計数
事故率
/10000
ASA
アラスカ航空
149,303 1 1 0 2 0.13
AAL
アメリカン航空
53,646 4 2 0 6 1.12
UAL
ユナイテッド航空
49,587 1 5 0 6 1.21
DAL
デルタ航空
41,965 3 0 0 3 0.71
HAL
ハワイアン航空
9,365 2 0 0 2 2.14

事故件数0の航空会社

SKW/スカイウェスト航空(29,568)、QXE/ホライゾン航空(25,788)、ENY/エンヴォイエアー(11,219)、RPA/リパブリック航空(8,272)、ASH/メサ航空(6,731)、ASQ/エクスプレスジェット航空(4,775)、EDV/エンデバーエアー(4,475)、JIA/PSA航空(3,583)、GJS/ゴー・ジェット航空(2,941)、NCR/コンパス・エアラインズ(1,980)、UCA/コミュートエアー(1,358)
※()内は輸送数合計、輸送数順

2017年の総輸送頭数(506,994頭)から見ると、2019年は全体で404,556頭と10万頭近くの減少。

この中でもやはり優秀なのは、最も多く動物を輸送したアラスカ航空(149,303頭)の0.13%という割合でしょうか。

一方でユナイテッド航空だけでなく、アメリカン航空・デルタ航空・ハワイアン航空3社の死亡数も無視できない数字となっています。

ユナイテッド航空は2017年の総輸送頭数 138,178頭から49,587頭と大きく総数を減らしていますが、事故の割合は1.21%と相変わらずの高さ

また、前年2018年にはフレンチ・ブルドッグが亡くなる痛ましい事故も発生しているため、利用者が減少するのも無理はないかなといったところです。

国際線(アメリカ)の年間平均は1万頭あたり0.78%

ここまでを総括すると、アメリカの全航空会社 過去5年間における年間平均輸送頭数は478,890頭、事故発生件数の年間平均は37.4件/年となっています。

このうち、

  • 怪我の件数は15.4件/年
  • 死亡の件数は21.2件/年
  • 喪失の件数は0.8件/年

となっており、過去5年間の平均事故発生率は10000頭あたり0.78%となっています。

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国内線 犬の輸送数と死亡率

夕焼けの中を飛ぶ飛行機

続いてて国内線を見ていきま・・・と言いたいところですが、残念ながら日本では米国運輸省から発表されているようなデータは公表されていません。

そのため、全航空会社の輸送数や死亡数・死亡率といった情報がなく、同じように比較することはできません。

国としての動物に対しての取り扱い方・考え方の違いが感じられますね。

やはり日本では、未だ「動物=物」という感覚が強いのでしょうか。世界的に見ても、動物福祉の考え方が遅れている事が否めません。

日本では唯一「ANA」だけが飛行機輸送中のペットの死亡率を公表しています。

ANA 2015年〜2020年 輸送中の事故件数

死亡した
動物
年間の事故
合計件数
2015 3月 1件
2016 10月 1件
2017 1月 1件
2018 0件
2019 11月 1件
2020 1月 1件

残念ながら事故は発生してしまっていますが、唯一公表しているという点は評価できるのではないでしょうか。

他の航空会社においても、実際に事故例がまったくないから公表されていないのか、それとも発生しているけれど公表していないのかは不明なので、今後はアメリカのように利用者が判断できる材料が増えることを望みます。

ANA 国内線の動物の死亡事故件数

総数がわからないので単純に比較することはできませんし、亡くなっている犬がいる以上、安易に「1頭だけだった」と楽観視することはできませんが、ANAでの事故数はアメリカで言うところのアラスカ航空の水準なのかな?と思われます。

そんなANAも、2013年にペットの犬(チワワ)が熱中症により死亡してしまう事件が発生しており、この1件からANAにはペット輸送による悪いイメージが付いてしまっています。

どんなイメージを持つかは人それぞれですが、批判する前にしっかり内容を理解しておきましょう。

航空会社だけではなく、飼い主の判断も重要です

ちなみにこの一件、羽田空港から離島便の航空機でしたが、貨物室内での事故ではなく貨物室までの輸送時に”駐機場”で発生していた事故とのこと。

調べたところ、事故が起きた日(2013年8月12日)の東京の気温は最高気温35.8℃、最低気温28.4℃を記録した猛暑日でした。

また前日11日は最高気温38.3℃、10日は37.4℃と連日の猛暑日となっていた中での事故です。

搬出時での管理体制にも問題はあったのかもしれませんが、全てANAの責任かというと判断は難しいところ。

いくら機内は空調が整備されているからといえ飛行機はおろか、このような猛暑日に犬を旅行に連れ歩くこと自体がハイリスクな行動です。

航空会社まかせに考えるのではなく、最終的にペットの命を守るのは飼い主の責任であるという事を理解し、必要であればキャンセルするという判断も必要です。

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国際線(ロシア) 犬の輸送数と死亡率

飛行機のイメージ画像
Image by Khusen Rustamov from Pixabay

続いてロシアの航空会社についてご紹介。

ロシアの航空会社でも、猫がモスクワ経由 ニューヨーク→ソフィア便の輸送中に死亡するという事故が発生しています。

この事故では3頭の猫が輸送されており、うち2頭は死亡、1頭は凍傷を負っておりロシア国内でもかなりの論争が起きていたようです。

結果として責任問題は航空会社ではなく空港を運営する会社の責任となり、運営会社・航空会社ともに公式コメントを発表。

荷物とペットの取り扱いに関する手順の見直し、規定の改善が必要という結論に至ったようです。

こうした事件を受け、Instagram等のSNSでは「私は荷物ではありません」という意味を持つ

#янечемодан (#iamnotluggage)
(露:не чемодан / 英:I am not luggage)

というハッシュタグが拡散される事態に発展しています。

国際線(フランス) 犬の輸送数と死亡率

エアーフランス
Photo by Tango Tsuttie on Unsplash

お次はフランス。

2019年にフランスの航空会社「エールフランスKLM」で、アムステルダム→ロサンゼルス便での輸送中に犬が死亡してしまう事故が発生しています。

同航空会社の規定では予防接種を受けていて、体重が18ポンド(8.16kg)以下の小型犬や猫であれば座席下のラゲッジスペースに連れて行くことができるのですが、亡くなってしまった犬は大型犬(ハスキー)だったため、貨物室での輸送となっていました。

やはり貨物室での移動はリスクが高くなると言わざるを得ないため、日本でも早く客席に持ち込めるようになってもらいたいものです。

気になる「喪失」という事故

犬の横顔

米国運輸省のデータを見ていると、死亡(deaths)負傷(injuries)の報告に加えて喪失(lost animals)の報告があるのが非常に気になる点でした。

喪失って・・・失くしたとか、消えたという事でしょうか・・・

2019年は幸い?にも0件というデータとなっていましたが、日本ではあまり考えにくい事故のように感じます。

公表されていないだけで、実際は発生しているのでしょうか?日本で発生するとかなり大問題になりそうな事故ですが、さすがは海外。

ペットを飛行機で輸送すること自体リスクは0%ではありませんが、まさか喪失するとは考えていませんので、これは100%航空会社・空港管理会社の責任でしょう。

ロシアでも喪失の事故は発生している

ロシアでもペットが”喪失”する事件は起きており、モスクワ経由のペルミ→ベルリン便にてモスクワにペットが置き去りにされ、12時間後に飼い主のもとに戻されたという事故が発生しています。

旅行で国際便を利用する方や、移住等で国際便を利用する方もいらっしゃるかと思いますが、国際線を利用する際には航空会社の動物の取り扱いについて、十分に把握しておく必要がありそうです。

また、目的地や出発地によっても搭乗可能なペットの月齢や種類などの条件は異なりますので、あらかじめしっかりと確認する必要があります。

BringFidoというサイトには、各航空会社のペットの取り扱いや料金について詳しく記載されており、かなりの数の(世界中の!)航空会社の情報が掲載されています。

国際線を利用する前にチェックしておきましょう。

結論:一部犬種を除き、飛行機移動の死亡率・リスクはそこまで高くない

日本でもペットと一緒に客席へ同乗することが許されれば、ペットの異変にすぐに気が付くことも出来るので、万が一トラブルが発生しても初動を取ることができ、最悪の事態を未然に防ぐことができるケースもあるでしょう。

アメリカの航空会社の多くは、座席の下に収まるサイズのキャリーに入れられれば、ペットも客室へ同乗することが認められています。

日本でもJALの「JALワンワンJET」といった企画運行が行われるなど、少しずつペットに対する反応も変わってきています。

今後、より安全に空の旅を愛犬や愛猫などと楽しめるよう、さらなる改善に期待しましょう!

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