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年間5,000件!犬の咬傷事故と飼い主が気をつけるべきポイント

犬の咬傷事故についてはニュースなどでも取り上げられるため、みなさんも目にしたことがあるかと思いますが、実は年間で約5,000件も発生しています。

愛犬を連れて外出する機会が多い方は、まさか自分の愛犬がと思ってしまいがちですが、データを調べていくと他人事ではないなという印象も。

今回は、犬の咬傷事故と狂犬病の予防接種について解説していきたいと思います。

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フェリー「商船三井さんふらわあ」での咬傷事故

さんふらわあ さっぽろ
Kei365投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

今回、咬傷事故についてお伝えするきっかけとなったのが、フェリーで知られる「商船三井さんふらわあ」の一件。

というのも、フェリー「商船三井さんふらわあ」はペットと一緒に泊まれる部屋があったり、船内にドッグランがあったりと、愛犬と船旅をするのにおすすめなフェリーだったためです。

今回の事件を受け、同フェリーへペット連れで乗船する際は、2024年7月1日(月)の出港便からは1年以内の狂犬病ワクチンの接種証明の提示”が必要に。

この対応については全く異議のないところで、フェリーを利用する方、働いている方、ペット連れでフェリーを利用するペットユーザーにとっても、安全な船旅をするために必要な対策かと思います。

「ペット不可」にならなかったことが救い

なにより、怪我をされたスタッフの方の(心のケアも)回復を願うばかりです。

一方で不適切かもしれませんが、この一件でペット不可にならなかったことは、一人のペットユーザーとして安心した部分でもあります。

犬は不安を感じたら本能的に咬んだり吠えたりする動物なので、根本的な原因は飼い主にあります。

こうした咬傷事故が頻発してしまうと、犬を飼っていない方も不安に感じることは必至。

その結果として、客室への持ち込み不可といった流れになる可能性もあるでしょう。

今回はフェリーの客室内で起きた事故ですが、犬連れで行ける場所はもちろんのこと、愛犬と”一緒に”過ごすことのできる場所が減ってしまう要因にもなりかねません。

そこで今回は、注意喚起や犬を飼育するうえで参考になればと、犬の咬傷事故について調べてみました。

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犬の咬傷事故は年間で約5,000件

口を開ける柴犬

今回、犬の咬傷事故について調べるにあたり参考にしたのが、環境省が公開している統計資料「動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)」の「犬による咬傷事故状況」です。

この統計によると、令和4年度の咬傷事故の総件数は年間で4,923件、咬傷事故を起こした犬の数は4,944頭というデータが出ています。

※複数頭による事故や、1頭が複数件の事故を起こしたケースもあるため、総件数と犬の数は一致しません。

犬の数のうち、野犬による事故は全体の1.1%(52頭)、飼い主不明の事故件数が全体の6.0%(297頭)になります。

つまり、飼い主が判明している犬による事故件数は92.9%(4595頭)と、9割を超える事故が飼育下の犬による事故となっています。

被害者の9割が「飼い主以外」

データを見ていくと、「飼い主や家族」が咬傷事故の被害者となる事例は、全体の4%にあたる204件。

一方、咬傷事故の被害者が他人の割合は93.1%(4,582件)と、そのほとんどを占めています。

今回の商船三井さんふらわあの件も同様ですが、犬の咬傷事故は他人が被害者になるケースが圧倒的に多いことがわかります。

また、残り5.1%にあたる252件は「人以外の動物」が被害となっている事例で、犬による咬傷事故は人以外にも及ぶケースがあります。

「公共の場」の咬傷事故が最も多い

続いて咬傷事故が起きた場所について見ていきましょう。

※パーセンテージは当サイトで計算した数値
出典 : 動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)
犬舎等の周辺 26.4%(1,300件)
公共の場 61.3%(3,019件)
その他 12.3%(604件)

咬傷事故の被害者は「飼い主以外」が最も多いというデータでした。

このデータにリンクするように、発生場所に関しても他人が多く存在している「公共の場」での事故が全体の6割を占めています。

商船三井さんふらわあの一件は、「船内客室フロアにて」とのことなので、公共の場に該当するか、その他(客室内)に該当するか微妙なところではありますが、”犬舎以外の場所”として考えると7割を超えるため、主に外出先での事故が多いと推測できます。

咬傷事故が発生しやすい状況下とは

飼い主と散歩をする犬

下記は、咬傷事故発生時における犬の状況に関するデータです。

※1 パーセンテージは当サイトで計算した数値
※2「野犬(放浪犬)」の113件を抜いたパーセンテージで計算
出典 : 動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)
けい留して運動中 40.0%(1,931件)
その他 27.1%(1,311件)
放し飼い 17.3%(835件)
犬舎等にけい留中 15.6%(755件)

咬傷事故を引き起こす割合として最も多かった状況が「係留中の運動中(40.0%)」という事で、主にリードをしながらの散歩中も含まれてくると思われます。

次いで多かったのが「その他(27.1%)」、「放し飼い(17.3%)」と続きます。

個人的にはノーリードの飼い主(放し飼い)が事故を起こしているイメージなのですが、割合としては1~2割ということで、意外にもリードをしながら普通に散歩をしているシチュエーションが多いようです。

咬傷事故発生時における被害者の状況

続いて、咬傷事故が発生した時、被害者の方はどのような状況下だったのかを見ていきます。

※パーセンテージは当サイトで計算した数値
出典 : 動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)
通行中 47.4%(2398件)
配達・訪問等の際 15.0%(760件)
犬に手を出した 14.8%(751件)
その他 13.9%(702件)
けい留しようとした 4.8%(242件)
遊戯中 4.1%(210件)

咬傷事故が発生した時、被害者の方の状況として最も多かったのが「通行中」の47.4%。

不用意に手を出したり(14.8%)、遊んでいる最中(4.1%)といった、いかにも興奮した犬が咬み付いてしまいそうなシチュエーションは1割前後に留まり、単に歩いていただけで咬まれてしまったというケースが半数近くを占めています。

散歩中に人とすれ違う機会は普通に多い状況ですが、被害者の方が何か特別な行動をとったわけではなく”歩いているだけ”という点は、多くの犬・飼い主さんに該当する部分なので、日頃から注意が必要です。

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予防接種と登録を忘れずに!

注射を打たれる犬

ここまでデータをいくつか紹介してきましたが、ポイントをまとめてみます。

・飼い犬による咬傷事故の割合:92.9%
・飼い主以外の他人、及び人以外が被害者の割合:98.2%
・公共の場での事故割合:61.3%
・(リードに繋いで)散歩中に事故が発生した割合:40.0%
・被害者が通行中に襲われた割合:47.4%

上記のとおり、普段は人を咬むような犬でなくとも、公共の場での散歩には十分に注意するべきというデータが見られます。

また一方で、万が一の事態に備えておくことが大切になるかと思います。

ここでいう”備え”は保険等も含まれてくると思いますが、日本で犬を飼育する以上、法律を守りながら飼育することが大切になってきます。

自治体へ未登録の飼い犬も

万が一に愛犬が他人に怪我をさせてしまったが、”予防接種”や”登録”が行われていないと、問題もより複雑になっていくことが予想されます。

前述のデータに戻りますが、令和4年度の咬傷事故を起こした犬の数は4,944頭で、飼い主が判明している4,595頭のうち、居住地に飼い犬の登録を行っているのが4,186頭、未登録が409頭となっています。

※パーセンテージは当サイトで計算した数値
出典 : 動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)
登録済 91.1%(4,186頭)
未登録 8.9%(409頭)
合計 4,595頭

飼い主が判明している犬のうち、8.9%の犬は居住地への登録が行われておらず、狂犬病予防注射の接種状況も不確かとなっているわけです。

この狂犬病予防注射ですが、法律で義務付けられていること、実は知らないという方も少なくありません。

接種証明の提示と登録

チワワ

「商船三井さんふらわあ」にて咬傷事故が発生したことで、今度からは狂犬病予防接種の(1年以内の)接種証明を提示する必要があります。

ワクチンの接種証明の提示に関しては様々な施設でも必要になるケースが多く、愛犬と外出する機会の多い飼い主さんであれば、これまでも提示を求められた経験があるのではないでしょうか。

  1. 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
  2. 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
  3. 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること

上記3つのポイントは厚生労働省の「犬の鑑札、注射済票について」というページにも明確に記載されていますが、日本国内で犬を飼育するうえで”犬の飼い主の義務”となるもので、守るべきルールとなります。

4月・5月・6月は狂犬病予防注射月間です

4月・5月・6月は狂犬病予防注射月間なので、今まで接種したことがない、もしくは接種はしているが登録はしていないという飼い主さんは、良いタイミングなので接種・登録を考えてみてください!

近年はペット連れで行ける場所も増え、フェリーや飛行機といった交通機関でもペット同伴で移動できる流れが増えてきているように感じます。

ペットユーザーのマナーが向上することでペットと楽しめる場所も増え、ペット同伴でも安心して受け入れてくれる施設も増えてくるはずです。

愛犬と一緒にレジャーを楽しむ際には、愛犬との思い出づくりだけを考えず、まずは飼い主マナーの向上と責任をしっかりと考えたうえで、レジャーを楽しむようにしましょう!

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