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発症後48時間が重要!殺鼠剤を食べた犬の症状や致死量とは

ネズミ駆除のために安易に殺鼠剤を使用してはいないでしょうか。

ベイト剤と呼ばれる餌タイプの殺鼠剤は、使用方法も設置するだけの簡単な製品ですが、家庭内における犬猫の誤食のうち、35%は殺虫剤や殺鼠剤というデータもあります。

殺鼠剤を設置する際には製品の成分をしっかりと理解し、犬猫にとって確実に安全な方法でネズミ駆除を行う必要があります。


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急性中毒を引き起こす「ベイト剤」とは

バーガーのチーズを盗むネズミ

ベイト剤は簡単に言えばエサ型の毒です。

餌として害虫・害獣を呼び込み駆除を行うタイプの殺虫剤・殺鼠剤で、餌には殺虫成分・殺鼠成分が含まれます。

ネズミやアリ、ゴキブリなどが対象として挙げられますが、基本的にベイト剤は道路脇や床に設置するため、犬や猫の誤飲に繋がりやすいとも言えます。

殺虫剤の犬や猫への悪影響については以下の記事でもご紹介しておりますが、相当量を誤飲しなければ影響は少ないと考えられます。

一方で、ネズミ駆除を対象とした殺鼠剤の誤飲については、十分な注意が必要になります。

殺鼠剤に含まれる「ワルファリン」を始めとした成分

殺鼠剤はネズミがベイト剤を摂取し、すぐに命を落とすわけではありません。

数日かけてベイト剤を摂取させ、中毒症状を引き起こすことで駆除するという目的を持ちます。

この殺鼠剤に多く使用される成分が「ワルファリン」という成分で、大量に摂取することで血が止まりにくくなる、凝固障害を引き起こす抗凝固剤となっています。

こうした殺鼠剤にはワルファリンや「クマリン」などの「蓄積毒」の成分が多く使用されており、殺鼠剤で有名な製品「強力デスモア」にもワルファリンが使用されています。

ワルファリンによる中毒症状

こちらを見つめるビーグル

殺鼠剤に多く使用されているワルファリンですが、犬がワルファリンを過剰摂取することでもネズミと同様に、血液の凝固障害が引き起こされてしまいます。

凝固障害が起こることで、下記に挙げられるような症状が引き起こされます。

  • 鼻血
  • 吐血
  • 下血
  • 皮下出血
  • 口腔内出血
  • 眼底出血

このように、犬の体の様々な部位から出血が起こります。また、脳内や関節内、消化管内、肺出血なども引き起こすことになり、やがて失血死を招く結果に。

凝固障害を引き起こすと48時間以内が重要に

凝固障害の発症から48時間以内は最も危険な状態であり、入院が必要となります。

元気の消失やタール状の血便、歯茎からの出血、呼吸困難といった症状も見られるので、殺鼠剤を食べてしまったと思った際にはすぐに動物病院へ行くようにしましょう。

また、同時にこれらの症状が見られないか注意深く観察することも大切です。

凝固障害に対する治療について

凝固障害に対する治療法は、まず吐かせる事を優先とし、止血・出血抑制の効果を与えるビタミンK1の投与が行われます。

出血が止まらなくなっているため、皮膚に針をさす血液検査等は行うことが出来ません。そのため、時間をかけてビタミンK1を摂取させる必要があるのです。

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殺鼠剤の致死量について

こちらを見つめる犬

犬や猫が凝固障害を引き起こすワルファリンの摂取量は、体重1kgあたりおおよそ5〜50g以上と考えられており、摂取後5日前後ほどで中毒症状を引き起こすケースが多いようです。

ただし、駆除対象となるネズミに効果を与えるまでには、おおよそ3〜5日連続して与える必要があり、中毒症状を引き起こすまでには更に3日〜5日を要します。

この間、1日でも摂取しない日があると、その効果も半減するのだそうです。

以前、40代の男性がワルファリン配合の殺鼠剤(0.05%)を50g服用し、中毒症状を引き起こしたたものの、8日後には退院したという事件もあったようです。

中毒症状を引き起こすまでには相当量を必要とするが

摂取量にもよりますが、ワルファリンを始めとする抗凝固剤は急性毒の殺鼠剤ではなく蓄積毒の殺鼠剤ですので、致命的な影響を与えるまでには相当量が必要になるでしょう。

体重がネズミよりも数倍以上ある犬や猫となると、2〜3粒食べたところで深刻な症状を引き起こすことは考えにくいのですが、摂取量によってはその限りではありません。

アース製薬のQ&Aでは、ペットや乳幼児が強力デスモアを誤って食べてしまった場合について下記のように説明しています。

数粒程度を食べたとしても、まず問題はありませんが、水か牛乳を飲ませて様子をみてください。
もし、大量に食べたり、異常が現れた場合は、医師または獣医師の診療を受けてください。

また、万が一食べてしまったときのため、(公益)日本中毒情報センター 中毒110番の電話番号とリンクも掲載されています。

より強力な第2世代の蓄積毒「ジフェチアロール」

後述しますが、ワルファリンは第1世代の抗凝固剤と呼ばれており、近年では第2世代にあたる「ジフェチアロール」と呼ばれる抗凝固剤も開発されています。

ジフェチアロールはワルファリンの300倍もの威力を持つ蓄積毒で、ワルファリンよりも少ない量で効果を与え、2日程度から中毒症状を発症し始めます。

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殺鼠剤の種類

ネズミ用の罠
Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像

では、現在市販されている殺鼠剤を例に、どのような殺鼠成分が使用されているのかを見ていきましょう。

犬や猫、小さな子供がいるご家庭によっては使用する殺鼠剤を十分に検討する必要があります。ねずみ駆除だけに気を取られて、より強力な物を設置しないようにしましょう。

強力デスモア【有効成分:ワルファリン】

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上記でも紹介してきたアース製薬「強力デスモア」。

強力デスモアにはワルファリンが0.05%(w/w)配合されており、ネズミが好む特殊な甘味料が配合されているようです。

※「(w/w)」は重量全体に対しての溶液の百分率です。100gの溶液に対し10gの成分を溶かした場合のw/w%は10%(w/w)となります。

安息香酸デナトリウムとは?

強力デスモアには「安息香酸デナトニウム(別称:デナトニウムベンゾエート)」という成分も含まれています。

安息香酸デナトリウムとは、「安息香酸」と「デナトリウム」という化合物が結合した物質で、苦味を与える物質として利用されています。

世界一苦い物質としても知られており、ギネスブックにも登録されているのだとか。

これがネズミの好む特殊な甘味料なのかは不明ですが、強い苦味を発する安息香酸デナトリウムは誤食防止の役割もあり、犬用のしつけスプレー等にも使用されている成分です。

エンドックス【有効成分:クマテトラリル】

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業務用の殺鼠剤として販売されている「エンドックス」。
エンドックスの有効成分は「クマテトラリル」と呼ばれるクマリン系の成分が0.75%配合されています。

クマリンはバニラに似た香りが特徴で、抗菌作用や抗酸化作用といった効果もある植物の一種であるため、実はサプリメントにも使用されているものです。

ただし、蓄積毒であるクマリンの過剰摂取は中毒を引き起こす要因となるので、サプリメントも厳格に摂取量が定められています。

デスモア プロ【有効成分:ジフェチアロール】


前述の「強力デスモア」よりも強力な殺鼠剤として販売されているのが、ジフェチアロールを配合した「デスモアプロ」です。

強力デスモアが3日〜5日連続して摂取させる必要があるのに対し、デスモアプロは1回の摂取でもネズミに中毒症状を引き起こすものとなりますので、犬や猫を飼っている家庭では使用を絶対におすすめできません。

効果対象としているドブネズミやスーパーラットの体重でおおよそ200gほど。犬猫に対しての明確な致死量は不明ですが、10gのスーパーデスモアで3匹ほどのスーパーラットを駆除できるようです。

スーパーラット・バスター【有効成分:リン化亜鉛】


「スーパーラット・バスター」には、ここで初めて登場した殺鼠成分の「リン化亜鉛」が配合されています。類似品に「チューチューバスター」という製品もリン化亜鉛が使用されています。

ワルファリンやジフェチアロールが蓄積毒の殺鼠成分なのに対し、リン化亜鉛は急性毒の殺鼠成分です。

詳しくは後述しますが、リン化亜鉛は犬や猫だけでなく人間にも中毒症状を与える「ホスフィンガス」を放出するため、取扱には十分に注意が必要であり、犬や猫を飼っている家庭では絶対に使用をおすすめできません。

リン化亜鉛を配合した商品にはスーパーラット・バスターの他にも「ネオラッテクイックリー」や「ダンクローデンG」という製品も該当します。

ネズミのみはり番 追い出しジェット【有効成分:天然ハッカ油】

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こちらは殺鼠剤ではなく「忌避剤」ですが、番外編としてご紹介します。

忌避剤ですのでネズミ駆除ではなくネズミを追っ払う効果を持つ製品で、有効成分は犬猫にも比較的安心な「天然ハッカ油」が配合されています。

ネズミは強いハーブ系の香りを嫌う習性がありますので、ハッカの強い香りも苦手としています。

ネズミを寄せ付けないために、ハッカの香りがするスプレーを噴射し、ネズミを追い出すのに適しているのが本商品になります。

猫にハーブやハッカは使用してはいけない?

猫にとってアロマオイル(精油)は中毒を引き起こす要因になるため、使用を避けなければなりません。

一方で、アロマの香りやハッカの香りもNGなのでしょうか。その答えとしては、利用しないほうが安心ということです。

ニットキャップにミント系の香りを染み込ませているものもありますので、絶対に有害なものとは言えませんが、やはり大量に摂取させるのは避けたほうが良いでしょう。

この製品は忌避剤として利用することが目的となりますので、噴射させる量も多いことが予想されます。使用する際には完全に部屋から隔離し、愛猫から匂いを避けるようにしなければなりません。

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注意が必要な「リン化亜鉛」

ネズミ
sibyaによるPixabayからの画像

「スーパーラット・バスター」などに配合されるリン化亜鉛は、濃度1%を超えると劇物指定となる急性毒の殺鼠成分です。

リン化亜鉛を摂取した駆除対象のネズミは、胃酸(もしくは水分)とリン化亜鉛が反応することで「リン化水素」という化合物が発生します。

このリン化水素は「ホスフィンガス(PH3)」とも呼ばれ、犬や猫のみならず、人間にも中毒症状を引き起こすものです。

ペットだけでなく、幼児にも十分危険な成分です

ホスフィンガス中毒を引き起こすと、頭痛や目眩、嘔吐、息切れなどの症状があらわれ、重度になると昏睡を引き起こし、場合によっては命を落としてしまう可能性もあります。

リン化亜鉛の致死量は成人でも5g程度とも言われてるため、10kg弱の犬猫であれば1gの摂取でも十分に危険な状態に陥ってしまうでしょう。

上記で紹介したリン化亜鉛を配合した製品には、製品に対して1%の配合がされているものもありますので、犬や猫などのペットだけでなく、小さなお子様がいる家庭では使用を避けた方が良いでしょう。

犬猫がいるなら殺鼠剤の使用は避けるべき

犬と少年
UnsplashMinnie Zhouが撮影した写真

冒頭でも触れたとおり、家庭内における犬や猫の誤飲・誤食のうち35%は殺鼠剤や殺虫剤で、多くが中毒症状におかされています。

いつもは拾い食いをしない犬であっても、物珍しい物が落ちていれば興味を示すことでしょう。また、ベイト剤はネズミに興味をもたせ、食いつきを良くしている事を前提としている殺鼠剤です。

絶対に大丈夫という事はありませんので、犬や猫、幼児がいる家庭では殺鼠剤の利用は避けたほうが安心です。また、どうしても利用する必要があるのであれば、十分に殺鼠剤の成分を熟知し、確実に犬や猫が通らない場所に設置しましょう。

【参照】

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