2022年4月、北海道で鳥インフルエンザに感染したキタキツネとタヌキが発見されました。
日本国内で初事例となる哺乳類への感染ですが、キタキツネもタヌキも犬と同じ哺乳類のため、愛犬も鳥インフルエンザに感染する可能性が否めません。
今回は犬が鳥インフルエンザに感染する可能性についてや、どのような点に気をつけるべきかを解説していきます。
国内で初となる哺乳類への感染
2022年4月4日に、国内では初となる哺乳類への感染が北海道で確認されました。
感染が確認された哺乳類は北海道に生息する「キタキツネ」で、札幌市内で死体として発見されています。
また、4月8日には同じく札幌市内で「タヌキ」も鳥インフルエンザに感染し、衰弱した状態で発見されました。タヌキへの感染も、国内では初の症例とのこと。
“捕食”して鳥インフルエンザに感染した可能性
鳥インフルエンザは鳥から鳥へと感染するウイルスですが、人への感染も報告されています。
ただし、人間のインフルエンザのように飛沫等を介して感染することはないと考えられており、鳥の糞や死体、臓器などへの濃厚接触を行うことで、稀に感染が確認されるとのことです。
今回、初の事例となったキタキツネとタヌキに関しては、いずれも鳥インフルエンザに感染していたハシブトガラスの死骸近くで発見されており、ハシブトガラスを捕食したことで鳥インフルエンザに感染したと考えられています。
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過去最高を記録している北海道の状況
毎年のように「鳥インフルエンザ」の名を耳にしている気がしますが、2021年10月〜2022年4月までに報告されている件数は、北海道内で過去最高を記録。
環境省より報告(2022年4月7日時点)されている全国の鳥インフルエンザ検査状況を確認してみると、高病原性(H5N3)が確認された野鳥の件数は66件となっており、うち31件が北海道内となっています。
(次いで岩手県の23件、鹿児島県の8件、その他1府3県で1件)
鳥インフルエンザの「高病原性」とは
主にニュースに取り上げられるのは「高病原性鳥インフルエンザ」とも呼ばれる亜型。
鳥インフルエンザウイルスにはいくつかの亜型が存在しますが、“高病原性”と呼ばれる鳥インフルエンザは、「鳥に対する10日以内の致死率が75%以上」である場合と定義されています。
高病原性鳥インフルエンザに該当する亜型には、「H5N1」「H7N9」「H5N8」等が高病原性に該当しています。
(H5N1)鳥インフルエンザA
2003年11月〜2021年までにWHOへ報告された、人への鳥インフルエンザ(H5N1)の症例数は863件、うち死亡した例が456件となっています。
中でも中東 エジプトでの症例数が359名(うち死亡が120名)、アジアではインドネシアでの症例が200名(うち死亡が168名)となっています。
なお、2022年現在で日本国内での人への感染報告はありません。
(H7N9)鳥インフルエンザA
2003年11月〜2021年までにWHOへ報告された、人への鳥インフルエンザ(H7N9)の症例数は1,568件、うち死亡した例が少なくとも616件という報告があがっています。
同期間の中でも、中国国内での発症例が1,560名と症例数のほとんどを占めており(ほか台湾5名)、輸入症例ではマレーシア(1名)、カナダ(2名)となっています。
なお、2022年現在で日本国内での人への感染報告はありません。
(H5N8)鳥インフルエンザA
H5N8は、2014年に極東ロシア 北部で発見された高病原性鳥インフルエンザAの亜型です。
2020年12月にはロシアの養鶏場で、90万羽のうち10.1万羽が死亡したという報告があり、日本においては2020年11月に香川県で初めて検出されています。
2021年、ロシアで初めて人への感染が確認(軽症状、全員が回復)されていますが、日本国内での人への感染報告はありません。
鳥インフルエンザは愛犬へも感染する?
キツネもタヌキも、系統を辿ると犬と同じ「イヌ亜科」の哺乳類です。
私達への鳥インフルエンザの感染は稀ということですが、キタキツネやタヌキへの感染が確認されたということは、愛犬へ感染する可能性もゼロではないということです。
ただし、先ほど説明したとおり哺乳類への感染は濃厚接触を行うことが基本となりますので、よほどのことでは感染することは無さそう。
とはいえ愛犬の散歩中に(鳥インフルエンザに感染している)カラスの死骸や糞を口にしてしまうと、鳥インフルエンザに感染する可能性もゼロではありませんので注意が必要です!
散歩中は電柱周りにも注意が必要!
電柱の下などはカラスや鳩の糞が落ちていたりするので、散歩中に電柱周りの臭いをよく嗅ぐ犬は特に注意が必要ですね。(うちの愛犬もです!)
また、鳥インフルエンザはもちろん、鳩の糞には「クリプトコッカス」というカビの一種が含まれており、クリプトコッカス症という病気を引き起こす要因となります。
因みにクリプトコッカス症はズーノーシス(人獣共通感染症)ですので、飼い主さんも注意が必要です。
外飼いの猫も要注意!
近年はあまり見かけなくなりましたが、猫を外飼い(もしくは外で遊ばせる等)している方も要注意です。
鳥インフルエンザに感染しているカラスを捕食、もしくは死骸を運ぶ可能性もありますので、愛猫を外飼している方は絶対にやめましょう。
死骸をくわえるなど、よほどのケースでなければ感染リスクは高くはないと考えられますが、愛犬・愛猫が鳥インフルエンザに感染する可能性についてもゼロではありません。
鳥インフルエンザについては油断してはいけませんが、特に流行の兆しが確認されている北海道では愛犬の散歩や外飼いの猫など、飼育方法にも気を付けておきたいところです。
【参照】
- 環境省 : 高病原性鳥インフルエンザに関する情報
- 農林水産省 : 鳥インフルエンザに関する情報
- 農林水産省 : 高病原性・低病原性鳥インフルエンザの発生状況(2021年以降)
- 厚生労働省 : 鳥インフルエンザA(H7N9)について
- 厚生労働省 : 鳥インフルエンザA(H5N1)について
- 厚生労働省検疫所 FORTH : 鳥インフルエンザA(H5N8)のヒト感染例報告-ロシア連邦
- 国立感染症研究所 感染症情報センター : 鳥インフルエンザに関するQ&A