秋田犬

北海道で頻発する犬や牛が犠牲になっているヒグマによる事件

2018年から2019年にかけて、北海道の道東地方でヒグマが犬を襲うという事件が発生しました。

本来であれば熊は臆病な動物であり、人や犬に近づく事は少ないと考えられていましたが、現代に生きる熊は少し様子が違ってきています。むしろ、犬は熊を刺激してしまう危険な動物にもなりえます。

今回は犬と熊の関係ついて解説していきたいと思います。

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熊に対して犬は危険な存在?

2頭の熊

熊と犬が戦う漫画で知られる「銀牙 -流れ星 銀-」や「銀牙伝説WEED」「銀牙伝説WEED オリオン」をご存知でしょうか。

私が子供の頃はこの銀河にハマっておりまして、犬好きの少年だった当時の私としては大好きな漫画の一つでした。

その影響もあってか、熊に対して犬は熊避けに有効な動物であるという認識を勝手に持っていた私ですが、実はその認識は間違ったものかもしれません。
※あくまで勝手な解釈なので”銀河”は悪くありません。

熊にとって犬は、ただただ熊を興奮させてしまう動物であり、犬を連れていることで危険度はより増してしまう可能性があるのです。

これ、実は意外と知られていない事実かもしれませんね。

道東ではあえて犬を狙うヒグマが出没

後述しますが、実際にヒグマが犬を襲う事件が2018年に発生し、同じ熊が2019年にも犬を襲うという事件が発生しています。

執筆時点でこのヒグマは発見されておらず、これまでに計5頭の犬が犠牲になっています。

我が家で飼っている「ヴィヴィアン」は相当勝ち気な性格のメス犬で、カラスなども追いかけようとする “銀牙寄り” なパピヨンなのですが、恐らく熊に出くわしたら間違いなく吠え立てて、熊に向かっていこうとするに違いありません。

しかし、ヴィヴィアンは訓練を受けているわけでもなく、マタギ犬でもありません。

現実は「銀牙」のようにいくはずもなく、恐らく一撃でやられてしまうことでしょう。

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マタギ犬が主人公のアニメ「銀牙」とは?

秋田犬
Photo credit: leonid.kornienko on VisualHunt.com / CC BY-SA

少し脱線。

私が子供の頃にハマっていた「銀牙 -流れ星 銀-」。ご存じない方のために少し説明しますが、銀牙は1980年代のアニメで、マタギ犬と熊との死闘を描いた高橋よしひろ先生の代表作です。

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私が夢中で見ていたのは「赤カブト編」と呼ばれる、一番最初のシーズンです。

凶暴で巨大な人食い熊「赤カブト」を討伐するため、主人公の秋田犬「銀」を始めとした犬の猛者軍団が奮闘し、日本全国を巡って犬が仲間を集めて赤カブトを倒すという斬新な物語でした。

アニメなので非現実的な模写も多いですが、私はこの漫画でブルドッグシェパードといったメジャーな犬種から、サルーキグレート・デンといった、子供にとっては比較的マイナーな犬種も覚えていきました。

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「マタギ犬」とは?

「マタギ犬」とは主に東北地方などで熊やイノシシを狩猟していた「マタギ」が連れていた狩猟犬の総称で、別称では「熊犬」とも呼ばれます。

犬種としては秋田犬のほか北海道犬がマタギ犬として有名ですが、マタギ犬として特定の犬種が決められているわけではありません。
※雑種でも適正能力が高ければマタギ犬になりうるという事です

銀牙の世界に登場する屈強な犬たちや、現実にマタギ犬として活躍している犬たちは自分よりも大きな体をした熊に立ち向かいますが、これも訓練や気質によるもの。

残念ながらペットとして飼育されている犬は、ヒグマにとっては単に刺激を与えてしまう存在でしかありません。

犬は熊を刺激する存在でしかない

吠える犬

基本的に熊は人間の気配を感じてもあえて襲ってくることはせず、身を隠してやり過ごそうとする臆病な動物です。

しかし、実際に人間と対峙した場合や熊の身に危険が迫っていると感じた場合は一転、攻撃体制に入ります。

これまではこうした考え方が通説ではありましたが、別記事でも紹介している通り現代のヒグマは人に対して怖いと感じていない個体が多いようなので、危険度は昔よりも高くなっていると言えるでしょう。

また、狩猟犬としての訓練を受けていない犬を連れて、むやみやたらと熊の出没する場所に愛犬を連れて行く行為も、実は危険度をより高める行為と言えます。

というのも、獣臭をまとった熊がいくら草むらに隠れていても、嗅覚の優れた犬が獣臭を見逃すわけもなく、犬が「なんだ!?なんだ!?」と吠えてしまうことで、クマを興奮させてしまうわけです。

訓練されていない犬を連れて、あえてクマが生息していそうな場所に行くのは非常に危険な行為なのです。

我が家の犬は完全に熊を興奮させるタイプ!

我が家のパターンで行けば、警戒心の強い次女のヴィヴィアンが何かの気配を感じて吠え、続いて3女のマロニーもヴィヴィアンに続いて吠え立てるのがいつものパターンなのですが、まさにこれが危険なパターンですよね。

我が家では犬連れでキャンプに行く機会も多いのですが、熊が意外と臆病だということは知っていたので、犬がいるから熊もあえてやってこないだろうと思っていました。

あえて熊の方から人間や犬の臭いのする所にやってくる確率は低いと言えますが、現代の熊は一昔前の熊と少し異なる部分も多いため、何があるかはわかりません。

また、その熊がゴミや残飯の味を知っていれば襲いに来る確率は一気に高くなるでしょう。

犬が被害を受けた熊による事件

暗がりにいるビーグル

熊があえて人や犬のいる場所にやってくる可能性は低いと説明しましたが、2018年の8月に道東の羅臼町で、鎖に繋がれた犬2頭がヒグマに無残に殺される事件が発生しました。

2019年に入ってからは7月、8月と立て続けに犬が襲われる事件が発生し、3匹の犬が犠牲になっています。

羅臼町を含む周辺エリアはヒグマが多く生息するエリアではありますが、熊があえて犬を襲いにくるという稀なケースが実際に発生しているわけです。

強い執着を抱く熊の習性

さらに恐ろしいのが、糞からの調査結果で計5匹を襲った熊はすべて同じ熊である事が判明した点です。

北海道のヒグマによる事件で有名な、計7名が犠牲となった「三毛別ヒグマ事件」でも知られるとおり、熊は一度覚えた獲物の味を覚え、再び同じ獲物を狙う習性を持ちます。

また、単に獲物の味を覚えるのではなく、その獲物に対して強い執着を持つというのも熊の習性で恐ろしい点です。

このヒグマは犬の味を覚えていたため、年をまたいで2019年も犬を襲いに来たわけです。

別の場所ではウシが犠牲に

ヒグマによる襲撃は犬だけではなく、牛にも広がっています。

7月16日に標茶町の牧場で飼育されている乳牛1頭が絶命しているのが発見され、8月4日には3頭の牛が絶命、他にも4頭の牛が傷を負った状態で発見されました。

8月6日には標茶町内の別の牧場で飼育されていた牛3頭が絶命、1頭が傷を負った状態で発見され、4日に起きた襲撃現場と6日の襲撃現場の距離は20kmも離れた場所でした。

ヒグマの行動範囲は半径50〜60kmと広範囲で知られますが、東京〜神奈川間や札幌〜苫小牧間の距離がおおよそ50kmですので、ヒグマの行動範囲がいかに広いかがおわかりになるかと思います。

このヒグマもまた、乳牛に対して強い執着を持っていることが行動からわかります。

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札幌市内で相次ぐヒグマの出没

歩く熊

2019年の8月に入ってから大きく取り上げられた事件が、札幌市内の住宅地に相次いで出没したヒグマの事件です。

8月に入り、始めに目撃されたのが3日のことで、中学校からわずか50mほどの場所で目撃されました。

幸いこの時期は夏休み期間中でしたが、ここから連日のように熊の目撃情報が相次ぐこととなります。

ヒグマの目撃情報と足どり

下記は8月に入ってからの熊の目撃情報ですが、札幌市南区の簾舞〜藤野エリアに何度も出没している事がわかります。

札幌市南区 20198月1日〜16日までの熊目撃情報
札幌市ヒグマ出没情報
日付
(全て2019年)
時刻 目撃した場所
8月1日(木曜日) 1時32分 南区藤野504番地3付近
17時55分 南区定山渓無番地(中山峠山頂から札幌方面に向かって約2kmの地点)
22時15分 南区小金湯30番地1付近
8月2日(金曜日) 10時15分 南区藤野668番地1付近
14時15分 南区藤野6条9丁目付近
21時20分 南区簾舞346番地9付近
8月3日(土曜日) 23時10分 南区簾舞5条2丁目1番付近
8月6日(火曜日) 1時30分 南区簾舞5条2丁目7番付近
20時55分 南区簾舞4条1丁目7番付近
22時15分 南区藤野4条11丁目11番付近
22時30分 南区豊滝491番地8付近
8月7日(水曜日) 19時15分 南区藤野4条11丁目11番付近
8月8日(木曜日) 22時0分 南区藤野4条11丁目17番付近
8月9日(金曜日) 6時30分 南区藤野6条6丁目9番付近
20時30分 南区簾舞437番地付近
21時0分 南区藤野541番地9付近
8月10日(土曜日) 7時30分 南区定山渓8番地付近
19時40分 南区藤野6条6丁目14番付近
8月11日(日曜日) 16時40分 南区簾舞485番地付近
20時40分 南区簾舞4条3丁目12番付近
8月12日(月曜日) 15時45分 南区豊滝149番地付近
18時0分 南区藤野4条8丁目付近
8月13日(火曜日) 14時20分 南区藤野514番地付近
18時50分 南区藤野4条3丁目17番付近
8月15日(木曜日) 23時0分 南区小金湯559番地付近
8月16日(金曜日) 18時36分 南区簾舞495番地7付近

ヒグマ駆除による賛否両論

熊の手
Photo credit: shannonkringen on Visual Hunt / CC BY

このヒグマは人や犬を襲うことはありませんでしたが、民家で育てられていたトウモロコシ等を食べ、連日のように札幌市内に出没しました。

このヒグマの場合は民家で育てられていたトウモロコシ等の作物を自分のものと認識し、このエリア一帯に強い執着を持っていたのでしょう。

残念ながらこのヒグマは14日に射殺され、駆除されることとなりましたが、この1件を受けて多くの意見が飛び交うこととなりました。

15日には300件にも上る意見・苦情が札幌市に寄せられたようですが、その多くは道外からのものだったと言われています。

道民としてもこのニュースは複雑なものであり、ヒグマに対しても悲しい気持ちを抱いた反面、仕方がなかったという気持ちでした。

この時点では ”たまたま” 作物を狙っていただけですが、自分の縄張りと考えている場所に居る犬や人間が、いつ襲われてもおかしくはない状況だったでしょう。

前述の通り、一度でも人を襲うようなことがあればヒグマは作物ではなく、今度は人を襲いに現れていたことでしょう。

さいごに

ペットとして飼育されている犬は、熊にとっては単に刺激を与えてしまう可能性が高いだけでなく、「獲物」になってしまう可能性が高いということを説明してきました。

不用意に熊の生息していそうなエリアに行くことは絶対に避けなければなりませんが、訓練を受けていない犬を連れて行くのは、熊よけになる可能性もあれば、熊を呼び寄せる可能性もあるということを理解しておきましょう。

また、キャンプなどに行く際には事前に向かうエリアのヒグマ出没情報を確認するなど、最低限の防御策は講じるようにすることをおすすめします。

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