皆さんは「パルム・ドッグ賞」という映画賞をご存知でしょうか。
「アカデミー賞」や「ゴールデングローブ賞」など、優れた映画作品に贈られる賞には色々な賞が存在しますが、パルム・ドッグ賞は優れた演技を見せた「犬」に対して贈られる映画賞です。
今回は、2001年〜2007年の歴代パルム・ドッグ賞受賞作品と受賞犬について詳しく解説していきたいと思います!
もくじ
- パルム・ドッグ賞とは?
- 第1回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2001年)「アニバーサリーの夜に」
- 第2回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2002年)「過去のない男」
- 第3回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2003年)「ドッグヴィル」
- 第4回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2004年)「モンドヴィーノ」
- 第5回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2005年)「天空の草原のナンサ」
- 第6回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2006年)「マリー・アントワネット」
- 第7回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2007年)「捨て犬マッカムの大冒険」「ペルセポリス」
- 第8回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2008年)「ウェンディ&ルーシー」
- 第9回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2009年)「カールじいさんの空飛ぶ家」
- 第10回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2010年)「タマラ・ドゥルー〜恋のさや当て〜」
- 第11回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2011年)「アーティスト」
- 第12回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2012年)「サイトシアーズ〜殺人者のための英国観光ガイド」
- 第13回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2013年)「恋するリベラーチェ」
- 第14回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2014年)「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」
- 第15回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2015年)「Arabian Nights」
- 第16回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2016年)「パターソン」
- 第17回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2017年)「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」
- 第18回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2018年)「ドッグマン」
- 第19回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2019年)「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
- 第20回は歴代1位を決める「パルム・ドッグ of パルム・ドッグス」
- さいごに
パルム・ドッグ賞とは?
かの有名なフランスの映画祭「カンヌ国際映画祭」の中の、初めは小さなイベントだったパルム・ドッグ賞(PalmDog Award)は、映画に出演している「犬」に与えられる映画賞のひとつ。カンヌ映画祭では、その年の最も優れた映画に「パルム・ドール賞(最高賞)」が贈られますが、パルム・ドッグ賞はこのパルム・ドール賞をもじった、シャレの賞でもありました。
2001年設立で、すでに20年もの歴史を持つパルム・ドッグ賞ですが、今では「カンヌ映画祭 特別賞」の枠組みで開催されるまでに成長。
俳優犬たちにとって、大変名誉ある賞となっています。
実は他の映画賞と同じくらい意味のある賞
パルム・ドッグ賞は俳優犬だけではなく、映画監督や出演者にとっても重要な意味を持つ賞なんです。
2019年のパルム・ドッグ賞授賞式では「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でパルム・ドッグ賞を受賞した犬「ブランディ」に加え、タランティーノ監督自らが授賞式を訪れるほどでした。
また、出演者のブラッド・ピットもブランディがパルム・ドッグ賞を受賞することを願っていたといいます。
審査員には映画評論家がズラリ
パルム・ドッグ賞の審査員には、英ガーディアン紙の「ピーター・ブラッドショウ(Peter Bradshaw)」さん、映画ジャーナリストの「ウェンディ・ミッチェル(Wendy Mitchell)」さんなど、日本ではあまり知られてはいませんが、著名な方々が審査員を務めていらっしゃいます。
犬に対して与えられる賞なので、動物愛護関係の方々が選出しているかと思いきや、「カンヌ映画祭」と同じタイミングで開催されているアワードなので、かなり本格的な映画評論家4〜5名が毎年審査員を担当しています。
つまり、パルム・ドッグ賞は単にかわいいとか、素晴らしいとかの物差しではなく、映画の一出演者(出演犬)として演技力や存在感をジャッジされ、選出されているわけです!
第1回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2001年)
「アニバーサリーの夜に」
タイトル (原題) |
アニバーサリーの夜に The Anniversary Party |
ジャンル/製作国 | コメディ アメリカ |
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受賞 | <パルム・ドッグ賞> オーティス(Otis) |
記念すべき第一回のパルム・ドッグ賞には、映画「アニバーサリーの夜に」に出演したシェパードとバセンジーのMIX犬「オーティス(Otis)」が受賞。
女優のジェニファー・ジェイソン・リーが主演・監督を務めた本作では、グウィネス・パルトローやアラン・カミング、フィビー・ケイツなども出演。
意外と豪華な出演陣も見どころです。
結婚パーティーに集まった男女の様子を描いた映画で、様々なトラブルやゴタゴタに見舞われる内容。
受賞したオーティスは、ゴタゴタの始まりと終わりを表現した”しおり”的なキャラクターで登場します。
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第2回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2002年)
「過去のない男」
タイトル (原題) |
過去のない男 (MIES VAILLA MENNEISYYTTA) |
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ジャンル/製作国 | コメディ,ロマンス /フィンランド、ドイツ、フランス |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> タハティ(Tähti) |
記憶を失い、貧しい人々と生活を再建していく男を描いたフィンランド映画「過去のない男」。
オスカー賞にもノミネートされた作品で、2002年のカンヌ映画祭グランプリ、最優秀女優賞を受賞した作品です。
こちらの映画に登場する「ハンニバル」という役名で登場した犬が、2002年のパルム・ドッグ賞を受賞。
因みにこの犬は、監督・脚本を務めた「アキ・カウリスマキ」さんが飼っているペットの「タハティ(Tähti)」なのだそう。
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第3回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2003年)
「ドッグヴィル」
タイトル (原題) |
ドッグヴィル Dogville |
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ジャンル/製作国 | サスペンス/デンマーク |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> モーゼス(Moses) <Special mention> ブルーノ 「The Triplets of Belleville」 |
2003年のパルム・ドッグ賞は、映画「ドッグヴィル」に出演した「モーゼス(Moses)」が受賞。
ニコール・キッドマン演じる女性を中心に、小さな町で起きる事件や生活を描いた作品。
全てが1つの舞台上で描かれ、作中でナレーションが頻繁に入るという斬新な手法でも話題になった映画です。
映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の監督・脚本が手掛けた作品で、パルム・ドッグ賞を受賞したモーゼスも、映画の最後の最後に登場。
ただ、かなりのインパクトを与えています。
内容はかなり暗いので好みが分かれるかもしれません!
また、2003年からはパルム・ドッグ賞の次点賞で、“この犬も見逃せない!”とも言うべき「Special mention」という名目の賞が誕生しています。
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第4回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2004年)
「モンドヴィーノ」
タイトル (原題) |
モンドヴィーノ (Mondovino) |
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ジャンル/製作国 | ドキュメンタリー/フランス、アメリカ |
受賞 | <<パルム・ドッグ賞> 主演したすべての犬 <Special mention> アクロバット 「Life is a Miracle」 |
2004年のパルム・ドッグ賞を受賞したのは、ドキュメンタリー映画「モンドヴィーノ」に出演した「すべての犬」が受賞。
フランスのワイン業界における現状や実態に迫った、本格派のドキュメンタリー映画のようです。
カンヌ映画祭パルム・ドール賞ノミネート作品とのことですが、私も見たことが無いので説明ができません・・・
パルム・ドッグ賞には特定の主演犬ではなく、主演したすべての犬が受賞という新しいパターンだけに、いつか見てみたい作品です。
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第5回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2005年)
「天空の草原のナンサ」
タイトル (原題) |
天空の草原のナンサ (Cave of the Yellow Dog) |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/ドイツ、モンゴル |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ツォーホル(Zochor)役のシェパード <Special mention> ウェスティ(名前不明) 「ぼくとボビーの大逆転」 |
2005年パルム・ドッグ賞に受賞した犬は、「天空の草原のナンサ」に出演していた「ツォーホル(Zochor)」役のシェパード。
「天空の草原のナンサ」は、モンゴルで遊牧民として生活する少女と一家を舞台にした作品で、2005年アカデミー賞 最優秀外国語賞にもノミネートされています。
少女が洞窟で発見した子犬の「ツォーホル(Zochor)」を父親に内緒で飼うものの、子犬がいつの間にかいなくなってしまう・・・という作品のようです。
公式サイトにも「Winner: “The Shepherd’s Dog”」としか記載がありませんが、「ブルーノ」という名前の犬かもしれません。
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第6回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2006年)
「マリー・アントワネット」
タイトル (原題) |
マリー・アントワネット (Marie Antoinette) |
---|---|
ジャンル/製作国 | ドラマ,伝記/アメリカ |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> モップス(Mops) <Special mention> シュナウザー(名前不明) 「Pingpong」 |
「マリー・アントワネット」を題材にした作品はいくつかありますが、2006年に製作された、キルスティン・ダンスト主演、監督 ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」は、映像美で特に話題になりました。
「浪費の女王」とも揶揄されるマリー・アントワネットの生涯を描いた本作では、劇中に登場するパグの「モップス(Mops)」が2006年パルム・ドッグ賞を受賞。
マリー・アントワネットと言えば「パピヨン」というイメージも強いですが、本作ではパグやチワワ、ペキニーズ等がメインで登場しています。
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第7回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2007年)
「捨て犬マッカムの大冒険」「ペルセポリス」
タイトル (原題) |
・捨て犬マッカムの大冒険 (Mid Town Gang) ・ペルセポリス (Persepolis) |
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ジャンル/製作国 | 捨て犬マッカムの大冒険 コメディ/タイ ペルセポリス 青春、アニメーション/フランス |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> すべての犬「捨て犬マッカムの大冒険」 ユキ「ペルセポリス」 <Special mention> 該当なし |
2007年のパルム・ドッグ賞は、なんと2作品に登場する犬が同時受賞という形になりました。
せめてどちらか決めてほしいという気もしますが、「捨て犬マッカムの大冒険」はコメディ映画、「ペルセポリス」はアニメーション映画という事で、パルム・ドッグ賞から初のアニメーション映画での受賞という点でも、これまでと違った形となったようです。
タイ映画「捨て犬マッカムの大冒険」は、タイの首都バンコクを舞台に、野良犬たちの冒険を描いたコメディ映画で、パルム・ドッグ賞には「すべての犬」が選ばれています。
「ペルセポリス」は1970年〜1990年代のイランを舞台にしたアニメーション映画で、テヘランに住む少女の人生を描いた、監督自身の自伝的な内容の作品のようです。
パルム・ドッグ賞には、作中に登場する「ユキ(Yuki)」という犬が受賞。
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第8回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2008年)
「ウェンディ&ルーシー」
タイトル (原題) |
ウェンディ&ルーシー (Wendy and Lucy) |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/アメリカ |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ルーシー(Lucy) <審査員賞> モリー 「ホルテンさんのはじめての冒険」 <Special mention> 該当なし |
2008年パルム・ドッグ賞は「ウェンディ&ルーシー」が受賞。
職を探すために愛犬を連れて町を離れ、道中に車の故障や金欠に見舞わられ、愛犬の餌を万引をしてしまうことで愛犬の行方がわからなくなってしまうという、トラブル続きの映画です。
本年度のパルム・ドッグ賞は、主演のミシェル・ウィリアムズ演じるウェンディが飼っている「ルーシー」が、創設以来初となる”満場一致”で受賞が決まったらしいです。
因みにルーシーは監督が飼っているペット(雑種)なのだそう。
2008年からは「審査員賞」が追加に!
2003年のパルム・ドッグ賞から「Special mention」という賞が追加になりましたが、2008年パルム・ドッグ賞からは正式に「審査員賞(Jury prize)」が誕生しました。
一方の「Special mention」は、その年によって出るか出ないかわからない”賞”となっており、審査員賞とは全く別の考え方を持つ賞となっています。
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第9回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2009年)
「カールじいさんの空飛ぶ家」
タイトル (原題) |
カールじいさんの空飛ぶ家 (Up) |
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ジャンル/製作国 | ファミリー、アニメーション/アメリカ |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ダグ(Dug) <審査員賞> レックス 「籠の中の乙女」 <Special mention> Tennants 「フィッシュタンク 〜ミア、15歳の物語」 |
2009年の受賞は、ディズニー・ピクサー映画らしい心温まる内容のアニメーション映画「カールじいさんの空飛ぶ家」から「ダグ(Dug)」という犬が受賞。
おじいさんが亡き妻との約束を果たすために、大量の風船を使って家ごと旅してしまうという、冒険アニメーション映画です。
パルム・ドッグ受賞のアニメーション映画 2作目となる本作。
首輪に翻訳機を付けたゴールデン・レトリバーの”野良犬”で、かなりいい味出している旅のお供です。
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第10回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2010年)
「タマラ・ドゥルー〜恋のさや当て〜」
タイトル (原題) |
タマラ・ドゥルー〜恋のさや当て〜 (Tamara Drewe) |
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ジャンル/製作国 | コメディ/イギリス |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ボス(Boss) <審査員賞> Vuk 「四つのいのち」 <Special mention> 該当なし |
2010年のパルム・ドッグ賞には、ラブコメ映画の「タマラ・ドゥルー〜恋のさや当て〜」に出演した「ボス」が受賞を決めました。
英ガーディアン紙に掲載されていた小説を映画化した作品ですが、日本では劇場未公開作品。
WOWOWオンラインで配信されていたようですが、執筆時点では配信も終了している様子でした。
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第11回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2011年)
「アーティスト」
タイトル (原題) |
アーティスト The Artist |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/フランス |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ジャックを演じたアギー(Uggie) <審査員賞> ライカ(Laïka) 「ル・アーヴルの靴みがき」 <Special mention> 該当なし |
「パルム・ドッグ賞」という賞の名を有名にしたのも、2011年公開の映画「アーティスト」で名演を見せた「アギー」のおかげと言っても過言ではありません。
「アーティスト」は映画界の変革期を描いたモノクロ映画で、サイレント映画からトーキー映画(台詞のある映画)へと移行していく1927年のハリウッドを描いた作品です。
2011年のアカデミー賞やゴールデングローブ賞など、名だたる賞を受賞した本作ですが、カンヌ映画祭ではパルム・ドッグ賞も見事受賞。
映画自体もかなりの話題作となっていましたが、「ジャック」を演じたアギーも話題の一つに上がっており、歴代の演技犬でも特に名を馳せる名犬となりました。
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第12回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2012年)
「サイトシアーズ〜殺人者のための英国観光ガイド」
タイトル (原題) |
サイトシアーズ 〜殺人者のための英国観光ガイド〜 Sightseers |
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ジャンル/製作国 | コメディ/イギリス |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ポピー役の「Ged」 バンジョー役のスマーフ <審査員賞> ビリー・ボブ 「Le grand soir」 <Special mention> 該当なし |
2012年のパルム・ドッグ賞には映画「サイトシアーズ〜殺人者のための英国観光ガイド〜」に出演した二頭の犬が選ばれました。
作品を見ていないのでわからないのですが、1頭は予告にも登場している「Poppy(ポピー)」を演じたGed、もう1頭が「Banjo(バンジョー)」を演じたSmurfという犬です。
どうやら犬に対する注意から物語が始まっているようなので、肝心な役どころのようですね。
予告にもたくさん登場しているので面白そうですが、殺陣シーンも登場してたので、そういうのが苦手な人は避けたほうが良いかも?
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第13回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2013年)
「恋するリベラーチェ」
タイトル (原題) |
恋するリベラーチェ Behind the Candelabra |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/アメリカ |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> Baby Boy <審査員賞> the pooch posse 「The Bling Ring」 <Special mention> 該当なし |
俳優のマイケル・ダグラス、マット・デイモン主演、スティーブン・ソダーバーグ監督の映画「恋するリベラーチェ」に出演していたプードル「Baby Boy」が2013年パルム・ドッグ賞を受賞。
また、審査員賞にはソフィア・コッポラ監督、エマ・ワトソン主演の「ブリングリング」に主演していた「The pooch posse」が選ばれました。
ソフィア・コッポラ監督の作品は2006年にパルム・ドッグ賞を受賞した「マリー・アントワネット」と合わせて2回目!
犬も優れた演技を見せていますが、監督の手腕も関係していそうです。
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第14回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2014年)
「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」
タイトル (原題) |
ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲 (White God) |
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ジャンル/製作国 | ドラマ /ハンガリー、ドイツ、スウェーデン |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ボディ(Body)とルーク(Luke) ※2頭で1役 <審査員賞> Roxy Miéville 「さらば、愛の言葉よ」 <Special mention> Moujik 「SAINT LAURENT」 |
公開時には、やや話題となった「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」。
作中では一人の女の子を中心に描かれますが、彼女が飼ってる”雑種犬”の「ハーゲン(Hagen)」演じる「ボディ(Body)」と「ルーク(Luke)」が、2014年のパルム・ドッグ賞受賞犬です。
ざっくり内容を説明すると、”雑種犬”に税金がかけられるようになり、多くの人が雑種犬を捨てるという行動に。
元々ペットとして飼われていた”雑種犬”たちは野犬の集団となり、生存するため、人間に対して攻撃を仕掛けるようになるという内容。
予告動画をみると多くの犬が登場していますが、その数も250匹にも及びます。
驚くことにパルム・ドッグ賞を受賞したボディとルークを除く、250匹の犬は、全て実際の保護施設から選ばれ、1ヶ月以上に渡る訓練を経た後に映画デビューしています。(撮影後はすべての犬に飼い主が見つかっているようです!)
“雑種犬”にターゲットを絞っていますが、大きな枠では「動物保護」をテーマとした映画。
映画はあくまで”捨てられた犬”の目線で作られていますので、基本的に”人間”は自分たちを捨て、恐ろしい目に合わせる”敵”として描かれています。
見た後は暗い気持ちになりますが・・・心には残る映画だと思います。
続いて、第14回パルム・ドッグ賞審査員賞を受賞した「さらば、愛の言葉よ」。
本作は巨匠と呼ばれたジャン=リュック・ゴダールの作品ですが、受賞した犬「ロクシー・ミエヴェル(Roxy Miéville)」は、ゴダール監督の愛犬とのこと。(※若干、過激な内容もあるので、予告動画に年齢制限がかかっているようです)
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第15回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2015年)
「Arabian Nights」
タイトル (原題) |
Arabian Nights |
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ジャンル/製作国 | /ポルトガル |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ラッキー(Lucky) <審査員賞> ボブ 「ロブスター」 <Special mention> 該当なし <Palm DogManitarian> 「アイ・アム・ア・ソルジャー (JE SUIS UN SOLDAT)」 |
第15回パルム・ドッグ賞は、全3部作、合計381分にも及ぶ超大作映画「Arabian Nights」より。
作中で登場する「ディキシー(Dixie)」を演じた、マルプー(マルチーズとプードルのMIX犬)の「ラッキー(Lucky)」が2015年のパルム・ドッグ賞を受賞しました。
「PalmDogManitarian award」が新たに作られました!
どんどんと盛り上がりを見せるパルム・ドッグ賞ですが、2015年からは最高賞のパルム・ドッグ賞と”この犬にも注目!”な「Special mention」に加え、「PalmDogManitarian award」という賞も追加に。
記念すべき最初の受賞は、映画「アイ・アム・ア・ソルジャー(JE SUIS UN SOLDAT)」というフランスの作品で、調べたところ、主人公が失業者で犬の違法取引を始めるといった内容の作品のようです。
PalmDogManitarian Awardの”DogManitarian”は、人道主義や博愛主義といった意味を持つ”Humanitarian(ヒューマニタリアン)”から派生させた言葉のようなので、”DogManitarian”は犬博愛主義や犬主義?といった意味なのかなと。
パルム・ドッグ賞は主に「作品」に出演している犬に対して与えられる賞ですが、「PalmDogManitarian award」は「作品」にこだわらず、”犬博愛主義”を広域で捉えた作品や考え方が該当する賞になっています。
正直こちらの方が興味ありますが、日本には入ってきていないようなので見られないようです。残念。
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第16回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2016年)
「パターソン」
タイトル (原題) |
パターソン (Paterson) |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/アメリカ |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ネリー(Nellie) <審査員賞> Jacques 「In Bed with Victoria」 <Special mention> 該当なし <Palm DogManitarian> ケン・ローチが制作した 3本足の「シア」の特集 「Ken Loach for featuring a three-legged Alsatian “Shea” in a number of his films.」 |
2016年のパルム・ドッグ賞は映画「パターソン」で「マーヴィン(Marvin)」を演じた、元保護犬の「ネリー(Nellie)」が受賞。(因みに俳優の永瀬正敏さんも出演してます!)
実はこのネリー、パルム・ドッグ賞を受賞した時にはすでに虹の橋を渡っており、パルム・ドッグ賞設立以来初となる、亡くなった演技犬に授与されるという快挙を成し遂げています。
ネリーは元々、ミュージカルなどでも人気を集めていた犬で、映画「パターソン」で初めての映画デビューとなっていましたが、映画の製作中に癌が発見され、8年の生涯に終わりを告げていました。
プロデューサーのカーター・ローガンさんは授賞式の際、元保護犬でもあったネリーの話に触れ、店やブリーダーからではなく、保護犬を養子にしてくださいとスピーチしたのだそうです。
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Palm DogManitarian 「Ken Loach for featuring a three-legged Alsatian “Shea” in a number of his films.」の動画や情報は発見できず。
第17回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2017年)
「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」
タイトル (原題) |
マイヤーウィッツ家の人々 (The Meyerowitz Stories) |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/アメリカ |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> スタンダード・プードルの アインシュタイン(Einstein) <審査員賞> Lupo 「Ava」 <Special mention> 該当なし <Palm DogManitarian> 女優のレスリー・キャロンと 17歳の救助犬「チチ」 「Leslie Caron and her 17year-old rescue dog Tchi Tchi」 |
アダム・サンドラー、ベン・スティラー、ダスティン・ホフマンなど、名だたる役者さんが登場する映画「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」。(”改訂版”だけど、これが本作。)
本作で2017年パルム・ドッグ賞を受賞した犬が、作中で「ブルーノ(Bruno)」を演じたスタンダード・プードルの「アインシュタイン(Einstein)」。白くてきれいなスタンプです。
因みに「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」はNetflixオリジナル作品となっているので、Netflixでのみ視聴可能となっています。
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Palm DogManitarian 「Leslie Caron and her 17year-old rescue dog Tchi Tchi」の動画や情報は発見できず。
第18回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2018年)
「ドッグマン」
タイトル (原題) |
ドッグマン (Dogman) |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/フランス、イタリア |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> 凍結と蘇生の演技をしたチワワ <審査員賞> 該当なし <Special mention> 「Vanessa Davies and her dog Patrick」 作家のヴァネッサ・デイヴィスさんと ペットのパトリック(「パグ・アクチュアリー」に出演) <Palm DogManitarian> Diamantino 「Gabriel Abrantes & Daniel Schmidt」 |
2018年のパルム・ドッグ賞を制したのは映画「ドッグマン」に出演したチワワ。
作品中、このチワワのジョイが登場するのはワンカットだけになりますが、”frozen and resuscitated chihuahua(凍結と蘇生のチワワ)”と、硬直した”演技”で受賞するほどのインパクトを与える演技力でした。
Special mentionには、作家のヴァネッサ・デイヴィスさんと映画「パグ・アクチュアリー」に出演していたペットのパトリックが受賞しています。
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第19回 パルム・ドッグ賞受賞作品(2019年)
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
タイトル (原題) |
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド Once Upon a Time in Hollywood |
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ジャンル/製作国 | ドラマ/アメリカ、イギリス |
受賞 | <パルム・ドッグ賞> ブランディ(Brandy) <審査員賞>(2作品) ・出演した犬 「Little Joe」 ・「Aasha and the Street Dogs」 <Special mention> 該当なし <Palm DogManitarian> Googleの犬に優しい環境と仕事場 (Google for good doggie deeds and wonderfully dog friendly workplace) |
1969年のハリウッドで起きた実際の事件「シャロン・テート殺害事件」を題材に、当時のハリウッド映画界を描いた「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」。
冒頭でも触れましたが、2019年のパルム・ドッグ賞には本作に登場したアメリカンピットブルの「ブランディ」が受賞しました。
タランティーノ監督といえば、生涯10作をもって監督業から引退すると宣言していますが、本作は9作目にあたる映画です。そんな貴重な作品でパルム・ドッグ賞を受賞したのは喜ばしいことですね。
そして、2019年のPalm DogManitarianを受賞したのは、これまでには無いパターンの「Google社」が受賞となりました。
いつもお世話になっている「Google社」ですが、Googleのオフィスと言えばペットを連れてきてOKな、ペットフレンドリーな職場で知られます。
今回はこうした、犬と人間社会にとってプラスな方向を向いている企業・犬博愛主義の企業として、Palm DogManitarian Awardを受賞することになったようです。
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第20回は歴代1位を決める「パルム・ドッグ of パルム・ドッグス」
2020年のパルム・ドッグ賞に関しては、これまでの歴代パルム・ドッグ賞受賞犬の中から、どの犬が最も優れた演技を見せたかという「Palm Dog of Palm Dogs」が開催されることに。
”パルムドッグ賞の中のパルム・ドッグ賞”という、歴代1位のパルム・ドッグ賞受賞犬を選ぶ2020年のパルム・ドッグ賞ですが、見事栄冠に輝いたのは2011年の映画「アーティスト」で名演を演じた「アギー」が、”Palm Dog of Palm Dogs”を受賞しました。
名犬アギーは2015年、虹の橋をすでに渡っていた
トップ・オブ・パルムドッグ称号を手に入れた、パルムドッグ賞の「顔」とも言えるスター犬アギーですが、実は2015年に13年間の犬生に幕を下ろしていました。
動物保護施設に送られるところだったアギーは、2002年生まれのジャック・ラッセル・テリアで、晩年は前立腺腫瘍が見つかり闘病生活を送っていましたが、最終的に安楽死という選択が取られました。
カンヌ国際映画祭が有するパルム・ドッグ賞も素晴らしい賞であることに違いありませんが、映画界での最高峰と言える「アカデミー賞」で「最優秀助演男優賞」の受賞を求める運動(Consider Uggie campaign:「アギーを検討」キャンペーン)も起きるなど、アギーの名演は数多くの話題を呼びました。
残念ながらアカデミー賞での受賞が叶うことはありませんでしたが、名だたる映画俳優などが手形・足型などを残すハリウッド大通りの「グローマンズ・チャイニーズ・シアター(TCL Chinese Theater)」前には、アギーの足型が設置されています。
2020年PalmDogManitarian賞受賞は?
2020年のPalm DogManitarian賞受賞は、イギリスのジャーナリスト「クレア・ボールディング(Clare Balding)」さんが受賞となりました!
日本では馴染みのない方ですが、クレアさんは大の動物愛好家でもあり受賞歴もあるジャーナリストで、BBC放送などでもコメンテーターを務める方のようです。
そんな彼女が、犬のしつけやコミュニケーションに関連したポッドキャスト「Dog Cast」の配信を初めたことでも話題を集め、こうした活動が評価されて2020年のPalm DogManitarian賞の受賞となったようです。
※ポッドキャスト:ラジオ放送のように録音したデータ放送
さいごに
今回はパルム・ドッグ賞の2001年受賞作から2019年受賞作までの作品と、パルムドッグ賞を受賞した名犬たちについてご紹介してきました。
たまにはこういった作品賞を辿って、映画選びしてみては?
一つでも、二つでも”これ見たい”と思っていただける映画があれば嬉しいです!
【参照】
- PALM DOG AWARDS
- Pet Guide.com – Cannes Canines Take Top Palm Dog Honors
- indiewire.com – The 2016 Palm Dog Posthumously Awarded to Nellie, The Dog From Jim Jarmusch’s ‘Paterson’
- Wikipedia – Uggie
- Filmarks