今回、お伝えしたいのは”愛玩動物”の定義。
意外と長くなってしまったので単独の記事としました。
”愛玩動物=ペット”というイメージですが、皆さんが考えている”ペット”。もしかすると愛玩動物に含まれていないかもしれません。
なお、この定義を理解しておきたいのは、動物取扱業を新たに登録・届出する方や、これからペット業界で働く!という夢を持った方。
ペットを飼う上で愛玩動物の定義はどうでもいい事?で、愛情を持って飼育するのにこの定義は何の関係もありませんので、本記事は「そうなんだね〜」程度で読んでください!
”愛玩動物”の定義
なぜ”愛玩動物”の定義が気になったのかというと、新たに作られた国家資格「愛玩動物看護師」の受験資格のひとつに実務経験も含まれるのですが、この実務経験の内容に関して以下のような例が挙げられています。
動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第10条に規定する第一種動物取扱業を営む事業所において、動物取扱責任者(法第2条第1項に規定する愛玩動物を対象とするものに限る。)として、対象業務を行った者
あまり深々と読むことも少ないのですが、”規定する愛玩動物”?となったわけです。
愛玩動物にも規定があるのかーと思って調べてみたのですが、犬、猫、愛玩鳥(オウム科全種、カエデチョウ科全種、アトリ科全種)以外は実はこれらの”動物以外”は愛玩動物に含まれません!
インコ科は対象外なの?

前職では長らくオールペットのショップで働いていたのですが、経験上”オウム科”の飼育は確かに難しく、幼齢から育てるのは難易度も高く専門性が必要となります。
一方で、”インコ科”のセキセイインコは難易度も比較的低く、ある程度の専門性があれば幼齢からでも飼育が可能ですが、オカメインコをヒナから育てるためには難易度もグッと上がります。
種類によって専門性が問われる鳥類において、「オウム科」は愛玩動物で「インコ科」は愛玩動物ではないの?と思って気になったので調べたのですが、結論としてはインコ科も”愛玩動物”に含まれるようです。
分類上はインコ科もオウム目
分類上では上記の通り、インコ科もオウム目なので”オウム科”で区切られるのはどうなの?と疑問だったわけです。
が、同じように考える方も多かったようで、以下のとおり、愛玩動物看護師法施行令案が発表された際に環境省へ寄せられた意見への解答が掲載されています。
獣医師法施行令第2条に規定する「オウム科全種」には、セキセイインコ、ボタンインコ等のいわゆる「インコ科」に含まれる鳥類も含まれるとお示ししています。
上記の通り、インコ科の鳥も愛玩動物に含まれるという認識になります。
ウサギやフェレットは愛玩動物?
続いて気になったのが、齧歯類の動物やペットとして人気の高い動物たち。
ウサギやハムスター、フェレットもペットとして高い人気を誇りますが、法における”愛玩動物”には含まれていません。
これについての解答もありました。
法における「愛玩動物」は、獣医師法第 17 条に規定する飼育動物のうちから決定されるものです。
この「獣医師法 第17条(昭和24年 法律第186号)」に記載されているルールが愛玩動物看護師法にも適用されていて(当然ではありますが)、ここで規定される”飼育動物”が”愛玩動物”というわけです。
獣医師法 第17条に定義されている動物
ちなみに獣医師法 第17条に定義されている動物というのが以下。
牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずら、その他獣医師が診療を行う必要があるもの
このとおり、犬と猫は含まれていますが、齧歯類をはじめとするお友達は含まれておらず。
簡単にいうと、昭和24年に決めた”飼育動物”の定義を今も変わらずに使っているという感じですね。
「ウサギもフェレットもペットとして人気なのに、時代遅れだな〜」なんて思ったりもしましたが、実はこの「獣医師が診療を行う必要があるもの」という点がポイント。
環境省の「資料2 愛玩動物看護師法第2条第1項に規定する動物(案)について」を確認するとわかるのですが、ここには「公衆衛生上の観点等喫緊の課題は見られない。」という記載があります。
オウム病と飼育数
”喫緊の課題”というのが、つまりは動物由来感染症(ズーノーシス)の危険性。
代表的なのが1980〜90年代にかけて流行した「オウム病」という動物由来感染症で、同資料にも代表例として記載されています。
<オウム病>
インコや鳩、オウム等の糞に含まれるクラミジアという細菌に感染することが原因で、発熱や風邪症状のような軽い症状を引き起こし、重症化すると肺炎や死に至るケースもある感染症。
この当時は犬猫に次いで鳥の飼育数が多かった時代背景があり、”獣医師”にオウム病の感染確認や診療依頼するケースが多かったようです。
そのため「獣医師が診療を行う必要があるもの」にオウム科(インコ科も含まれる)が含まれたというわけですね。
なお、以下の記事でもズーノーシスについて解説していますので、興味がある方はぜひ。
関連する記事
ペット=愛玩動物ではない
うさぎやフェレットは飼育数が多い人気の動物で獣医師も診療する機会が多く、なおかつ”喫緊の課題”もない動物。
現時点で公衆衛生上の観点からも問題のない動物であるため、法に縛る必要がないというか、法が定義する”愛玩動物”には含まれていないわけです。
つきつめていくともっと説明が必要な部分もありますが、大枠で説明すると法における”愛玩動物”はこうした理由から定義されているようです。
法改正で内容が変わる可能性も?
飼育数は多くとも、喫緊となる課題や問題がなければ法に定める必要がないわけで、決して「考えが古い」とか「うさぎはペットとは呼べないよね〜」的な感覚で愛玩動物に含んでないわけではありません。
もちろん、執筆時点は2024年ですが、今後法律が改正される可能性は大いにありうるので、内容も少しずつ変わっていくことはあるでしょう。
ちなみにですが、人間のインフルエンザはフェレットにも感染しますので注意。(逆も然りですが頻度は少なめ)
【参照】
- 環境省 : 動物の愛護と適切な管理
- 環境省 : 資料2 愛玩動物看護師法第2条第1項に規定する動物(案)について
- 環境省 : 実務経験の例