ペット用品や殺虫剤(蚊取り製品)等にも使用される「イソプロパノール」という成分。
ペット用品にも使用されているので、犬や猫には害のある成分ではないものの、どんな成分なのかが気になってしまう飼い主さんもいるかと思います。
今回はそんなイソプロパノールについて解説していきます。
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イソプロパノールとは?
イソプロパノールは消毒液で知られる「エタノール」と同様、消毒効果をもつ物質です。
別名イソプロピルアルコール(IPA)とも呼ばれるアルコールの一種で、消毒や洗浄、抗菌剤として幅広く利用されているようです。
ただしノロウイルスなど、ウイルスに対する消毒効果はイソプロパノールの方が劣るため、一般的にはエタノールが選ばれるとのこと。
といってもこれは”人間”に対しての話。
犬や猫の場合はエタノールを使用するべきではありません。
犬や猫のエタノール中毒
エタノールを含むものには消毒液やアルコール飲料、化粧品などが挙げられますが、エタノールは犬や猫に対して悪影響を及ぼす成分です。
犬は「エタノール中毒」を引き起こしてしまい、数時間以内に症状を発症するケースも多いようなので注意!
コロナウイルスが流行してからは消毒液を常備している家庭も増えたと思いますが、あくまでこれは人間に対してのもの。
ペットが居る家庭の消毒液等は、ノンアルコールの製品が安心です。
イソプロパノールの毒性について
平成28年に農林水産省動物医薬品検査所から発表されている「承認されている動物用消毒薬について」というデータ。
このデータによると、動物用消毒薬としてアルコール製剤(エタノールやイソプロパノール)の承認はないと記載されています。
つまりは、犬や猫が怪我をしてもイソプロパノールを塗ればよいという事ではありません。
濃度によっては注意が必要です
イソプロパノールの「濃度」によっては、犬や猫にとって毒性のある物質となり、症状としては嘔吐や深刻な中毒症状、皮膚への強い刺激が挙げられます。
そもそもイソプロパノールはアルコールの一種ですので、経口用として利用するには不向きと言えそうです。
ではなぜ、イソプロパノールは動物用の商品に使用されているのでしょうか?
“適切な濃度”のイソプロパノールを摂取することで犬に悪影響は?
イソプロパノールはアルコールの一種ですが、少量であれば動物に対しても安心であるとされています。
実際、2011年11月に「食品安全委員会添加物専門調査会」から発表されている「添加物評価書 イソプロパノール(第2版)」では、犬に対しての投与実験も行われています。
この評価書によると、イソプロパノール投与後24時間までに血中からイソプロパノールがほぼ消失したとの実験結果が記載されていました。
この調査結果からも分かるとおり、少量のイソプロパノールであれば動物への悪影響は低いと考えられます。
イソプロパノールを含む犬猫用品

イソプロパノールは、犬猫用のいたずら防止やしつけ用として使用されるロングセラー商品「ビターアップル」に含まれています。
ビターアップルは犬にとって苦みを感じる製品で、犬にいたずらされたくない場所にスプレー(もしくは塗布)することでいたずら防止を行うアイテム。
苦味成分の正体は「天然の未熟リンゴ」から抽出されたもので、この苦味成分を溶媒するため、少量のイソプロパノールが使用されると推測されます。
1960年から続く製品なので、安全性についても問題はないと思われます。
国内メーカーのいたずら防止スプレーには「食品用アルコール」が使われているよ(という表記?)。
イソプロパノールの猫や他のペットに対する影響は?
以前は犬用、猫用といったかたちで分けられていたビターアップルスプレーですが、現行品は鳥やうさぎ、フェレットなどにも使用できる「オールペット用」としてリニューアルしています。
もともと犬用・猫用と分けられてはいたものの、基本的にリンゴを食べることができる動物には使用可能ということですね。
イヤークリーナーにも使用されているイソプロパノール
イソプロパノールはイヤークリーナーにも使用されています。
成分の効果を持続させるためや、犬がすぐに舐めてしまうのを防ぐため、速乾性のあるイソプロパノールが含まれていると考えられます。
殺虫剤にも含まれるイソプロパノール
近年、蚊取り線香に変わる人気製品となってきているのが、1プッシュで12時間〜24時間殺虫効果が持続する殺虫剤。
上記の「アース おすだけノーマット」の有効成分はトランスフルトリンという成分ですが、「その他の成分」としてイソプロパノールが使用されています。
イソプロパノールは揮発性が高いので、殺虫成分を素早く乾かすために含まれると考えられますね。
トランスフルトリンは、蚊取り線香にも含まれるピレスロイド系の殺虫成分で、以下の記事でも詳しく解説しています。
さいごに
殺虫剤やしつけ用品などに使用されているイソプロパノール。
今回調べてみたところ、犬や猫に対しての悪影響は限りなく低いということがわかりました。
とはいえ、極端なアレルギー反応を示す場合もありますので、使用する前にはより少量で試してみても良いかと思います。
Reference
- 健栄製薬 : 消毒薬の基礎知識(イソプロパノールとエタノールの消毒効果の違いは?)
- 食品安全委員会添加物専門調査会 : 添加物評価書 イソプロパノール(第 2 版)
- 農林水産省 : 承認されている動物用消毒薬について